サッカー中継や解説で耳にすることが増えた「インテンシティ」という言葉。聞いたことはあるけれど、具体的にどんな意味で使われているのか、分からないという人も多いのではないでしょうか?実はこの言葉、今のサッカーを語る上でとても重要なキーワードなんです。今回は、「インテンシティ」の本当の意味と、なぜ注目されているのかを、わかりやすく解説していきます!
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サッカーで使われる「インテンシティ」とは?
インテンシティの語源と一般的な意味
「インテンシティ(Intensity)」という言葉は英語が語源で、直訳すると「強烈さ」「強度」「集中力」などを意味します。日常的な英語の会話や文章でも使われる単語ですが、スポーツ、特にサッカーにおいては少し特有の意味合いを持ちます。単に力強いというだけでなく、「どれだけ激しく」「どれだけ速く」「どれだけ粘り強く」プレーに関与しているかを示す言葉として使われているのです。
つまり、インテンシティはプレースタイルや戦術、さらには選手のメンタル面までも含めて評価されるものであり、単なるフィジカル能力だけを示す言葉ではありません。たとえば、試合中に何度も相手に向かってプレッシャーをかけたり、1対1の場面で必死にボールを奪おうとしたり、攻撃から守備へと素早く切り替えたりする行動がインテンシティの高いプレーと評価されます。
この言葉がサッカー界で注目されるようになったのは、プレースピードが上がり、よりダイナミックな動きや判断力が求められるようになったからです。特に欧州のトップリーグではこの傾向が顕著で、インテンシティの高いプレーがスタンダードとなっています。現代サッカーを理解する上で、インテンシティという概念を知ることは非常に重要です。
サッカーにおける特有の使われ方
サッカーで「インテンシティ」という言葉が使われるとき、それは主にプレーの“激しさ”や“強さ”を評価するためのものです。具体的には、ボールに対してどれだけ素早く、積極的に、そして繰り返しアクションを起こせるかが焦点になります。例えば、守備の場面で相手に対してタイトにマークし、ボールを奪うためにスライディングを試みるようなプレーは、インテンシティが高いとされます。
一方、ただ走っているだけではインテンシティが高いとは言えません。プレーの中に「意図」や「狙い」があること、つまり戦術に基づいた積極的な動きが求められるのです。そのため、単なる運動量よりも「効果的なプレー」が評価される傾向にあります。
また、攻撃時でもこの概念は重要です。特にカウンターアタックやトランジション(攻守の切り替え)において、どれだけ速くポジションを取り、味方の動きをサポートできるかが勝負の分かれ目になります。現代サッカーではこうした場面でのインテンシティが試合の流れを大きく左右するため、指導者や解説者がこの言葉を頻繁に用いるのです。
インテンシティはどんなプレーに表れるか
インテンシティの高いプレーとは、見ていて「激しい」と感じるようなアクションが多く含まれるプレーです。例えば、1対1で相手と体をぶつけ合いながらボールをキープしたり、ルーズボールを全力で追いかけて奪い取ったりするシーンがそれに該当します。これらは観ている側にも迫力が伝わりやすく、解説者が「インテンシティが高いですね」とコメントする場面でもあります。
インテンシティはまた、「プレッシャーの速さ」や「切り替えの速さ」とも関係があります。守備の場面でボールを失った瞬間、すぐにプレッシャーをかけて相手の自由を奪う動き。これが速ければ速いほど、相手に自由なプレーをさせず、試合を優位に進めることができます。
さらに、チーム全体のインテンシティも重要な指標になります。ひとりの選手だけが激しく動いても、他の選手が連動していなければ効果は薄いのです。全員が連携して高いインテンシティを保つことが、強いチームの条件と言えるでしょう。
戦術やメンタル面でも使われる理由
「インテンシティ」はフィジカルの強さを表す言葉のように思われがちですが、実は戦術やメンタル面にも深く関係しています。例えば、相手のパスコースを予測し、先回りして動くためには高い集中力と判断力が必要です。これもインテンシティの一環とされます。
また、90分間の試合を通じてどれだけ集中力を維持できるかも大事な要素です。試合の終盤に疲れてきたときでも、最後まで諦めずにボールを追う姿勢は「メンタル的なインテンシティ」と言えます。こうした姿勢はチームに大きな影響を与え、士気を高める効果もあります。
さらに、戦術的なインテンシティとは、「戦術をどれだけ速く、正確に遂行できるか」という観点です。例えば、守備のプレス戦術では、味方と連動して一気にボールを奪いにいく場面があります。このとき、個々の動きが遅かったり、判断ミスがあると全体の戦術が崩れてしまいます。したがって、インテンシティは個人の力だけでなく、チーム全体の意思統一とも深く関係しているのです。
日本サッカーでの浸透のきっかけ
日本のサッカー界で「インテンシティ」という言葉が注目されるようになったのは、2013年ごろからです。当時の日本代表監督だったアルベルト・ザッケローニ氏が、ワールドカップ最終予選の記者会見でこの言葉を繰り返し使ったことがきっかけでした。彼は「技術や戦術だけでなく、インテンシティがなければ世界と戦えない」と強調しました。
その後、2015年から日本代表を率いたヴァイッド・ハリルホジッチ監督も同様にこの概念を重要視し、選手たちに「プレーの強度」を強く求めました。彼は特に「デュエル(1対1の競り合い)」を重視し、選手に対して球際での勝負を意識させました。
また、テレビ中継やスポーツ解説の中でもこの言葉が使われるようになり、サッカーファンの間でも少しずつ浸透していきました。現在では、Jリーグの試合でも「インテンシティが高い試合」「低い試合」などの評価が当たり前のように語られるようになり、日本サッカーの中で一般的な用語となっています。
「インテンシティ」が日本で注目され始めた背景
ザッケローニ監督の影響
「インテンシティ」という言葉が日本のサッカーファンの間で広く知られるようになったのは、2013年のワールドカップ・アジア最終予選がきっかけでした。当時の日本代表監督アルベルト・ザッケローニ氏は、対オーストラリア戦に向けた記者会見で「インテンシティが足りない」「インテンシティを高める必要がある」といった言葉を何度も口にしました。
この発言は、それまで日本ではあまり使われてこなかった新しい表現として注目を集めました。特にザッケローニ監督は「インテンシティ」が単なるフィジカルの強さではなく、技術と戦術を最大限に活かすための“プレーの質”であることを繰り返し強調しました。つまり、ボールを持っていないときの動き、切り替えの速さ、プレスの強さなど、総合的なパフォーマンスの中にインテンシティが存在すると考えたのです。
これをきっかけに、日本の選手や指導者たちもインテンシティの重要性を認識するようになり、プレーの中で「どれだけ強く、速く、意志を持って動けているか」を問うようになったのです。
ハリルホジッチ監督とデュエルの概念
ザッケローニ監督の後を継いで日本代表を指揮したヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、インテンシティを非常に重視した指導者でした。彼はさらに、「デュエル」という新たなキーワードを導入しました。デュエルとは、1対1での競り合いを意味する言葉であり、フィジカルだけでなく気持ちや判断力も試される局面です。
ハリルホジッチ監督は「日本の選手にはインテンシティとデュエルの意識が足りない」と断言し、それを改善することが日本代表強化のカギであると考えていました。彼の下では、選手一人ひとりが練習から激しくぶつかり合い、球際の強さを追求するようになりました。
特に印象的だったのは、試合後のコメントで「誰がデュエルに勝ったか」を数値で示し、それを評価の一部に取り入れていたことです。これにより、インテンシティは感覚的なものではなく、数値やデータで管理できるものとしての側面も持つようになりました。
メディアや中継での使われ方の変化
ザッケローニ監督やハリルホジッチ監督がインテンシティを強調したことで、スポーツメディアやテレビ中継でもこの言葉が頻繁に使われるようになりました。以前は「頑張っている」「走っている」といった曖昧な表現が使われていた場面でも、「インテンシティが高い」「インテンシティが足りない」といった具体的な評価が増えてきました。
特に解説者や元選手のコメントで、「今のプレーはインテンシティがすごいですね」といったフレーズが使われることで、視聴者も自然とこの言葉を理解するようになりました。Jリーグの試合でも「高インテンシティな試合展開」という言い方がされることが多くなり、試合の質を評価する一つの基準となってきたのです。
また、選手インタビューでも「今日はインテンシティを意識してプレーしました」と話す選手が増え、インテンシティが日本サッカーの共通言語として根づき始めていることが分かります。
選手や指導者への意識変化
監督やメディアの影響を受けて、選手や指導者たちもインテンシティの概念を積極的に取り入れるようになりました。特に若い世代の選手たちは、育成年代から「強くプレーすること」「ボールを奪い切ること」「スピードを持って攻守を切り替えること」などが求められるようになり、自然とインテンシティの高いプレーを目指すようになっています。
指導者の間でも、インテンシティを上げるためのトレーニングが重要視されており、スプリントの回数やプレッシングの精度を細かく指導する傾向が強まっています。たとえば、1対1の練習では「絶対に負けるな」というメッセージを込め、競争意識を高める工夫も見られます。
こうした動きは、日本サッカー全体の底上げにつながっており、選手が世界と戦うための基礎体力やプレー強度を着実に高めていると評価されています。
ワールドカップで見せた具体的なプレー
ワールドカップなどの大舞台では、インテンシティが勝敗を分ける決定的な要素になります。たとえば、2018年ロシア大会での日本代表のプレーは、その好例と言えます。グループステージのセネガル戦では、球際での粘り強さや切り替えの速さが光り、世界の強豪と互角に渡り合うためにはインテンシティが不可欠であることを示しました。
特に乾貴士選手の積極的なプレッシングや、長友佑都選手の上下動の多さは、高いインテンシティの象徴でした。彼らのように、身体能力に加えて戦術理解度や精神力が融合したプレーは、見ているファンにも大きな感動を与えました。
このように、インテンシティの高いプレーはピッチ上で目に見える成果をもたらすだけでなく、試合の流れや雰囲気さえも変えてしまう力があるのです。
身体的なインテンシティとは何か?
球際での強さとインテンシティの関係
サッカーにおける「インテンシティ」と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、球際のプレーです。1対1の場面で相手と身体をぶつけ合いながらボールを奪う、その激しさがインテンシティの象徴ともいえます。たとえば、相手がボールを持っているときに一歩でも速く寄せて、身体を当てて自由を奪うプレーは、観ている側にも強烈な印象を与えます。
この球際のプレーでは、単なる力の強さだけではなく、タイミングや姿勢、そして“絶対に奪う”という気持ちが重要です。どれだけ技術があっても、球際で負けてばかりでは試合に勝つことは難しいため、選手にとってはフィジカルだけでなくメンタルの強さも求められる部分です。
また、球際でのプレーは試合の流れを大きく左右します。ルーズボールを奪えるかどうかで、その後の展開やゴールチャンスにも直結するため、監督もこのプレーを重視しています。現代サッカーではこのようなプレーがチーム全体の評価にもつながり、選手のポジション争いにも大きな影響を与えているのです。
スプリントとスピードの重要性
サッカーは90分間にわたりフィールドを駆け回るスポーツですが、特に重要視されるのが「スプリント」つまり全力疾走の能力です。スプリントはインテンシティを数値で測るうえでも基準となっており、選手の持つスピードとその発揮タイミングが試合のカギを握る場面は多々あります。
たとえば、ディフェンスラインの裏に抜け出す動きや、カウンターの際に一気に前線へ駆け上がる動きなどは、どれもスプリントが必要不可欠です。また、守備においても相手の速い攻撃に対して素早くポジションを取り直すためには、速く走る力が求められます。
近年のプロ選手では、試合中に20回以上スプリントを記録する選手も多く、これは単なる走行距離だけでなく、プレーの質を示す重要なデータとなっています。特に海外の強豪リーグでは、スプリント能力の高い選手が優先的に起用される傾向にあり、Jリーグでもその流れに追いつくようトレーニングが進化しています。
試合中の連続した動き
現代サッカーでは、「一つのプレーで終わらない動き」が求められています。つまり、ボールを蹴ったら終わりではなく、その後すぐにポジションを修正したり、再びボールを受けるために動いたりする必要があるということです。このような連続的な動きができるかどうかが、インテンシティの高さを示すポイントになります。
例えば、パスを出した選手がそのまま走り込み、再びボールを受けてチャンスを作る「ワンツー」の動き。これは瞬時の判断と素早い切り替えが必要で、体力だけでなく意識の高さも問われます。また、守備ではボールを奪ったあとすぐに攻撃に転じる「トランジション」が重要で、ここでも連続的な動きが試されます。
このようなプレーを90分間続けるには、相当なスタミナと集中力が必要です。そのため、プロ選手のトレーニングでは「連続スプリント能力」や「切り替え力」を養うメニューが増えています。これによって、単発的なプレーではなく、持続的にチームに貢献できる選手が評価されるようになっているのです。
接触プレーにおける身体の使い方
サッカーは非接触のスポーツと思われがちですが、実際はかなりの頻度で接触プレーが発生します。特にポジション争いや空中戦では、上手く身体を使えるかどうかが結果に大きく影響します。ここで重要なのが「ボディバランス」と「体幹の強さ」、そして「当たり負けしない身体の使い方」です。
たとえば、相手選手と競り合いながらも倒れずにボールをキープするシーンでは、筋力よりも身体の使い方がものをいいます。肩を当てる角度や体重のかけ方など、細かな技術が詰まっているのです。これもインテンシティの一部とされ、特にDFやボランチの選手にとっては欠かせない能力です。
また、空中戦ではタイミングよくジャンプし、相手より高く飛ぶだけでなく、着地後に素早く次の動きへ移れるかも大事です。これにより、守備の安定感や攻撃の起点にもつながります。選手たちは日々、こうした身体の使い方をトレーニングで磨き、インテンシティを高める努力を続けているのです。
トレーニングでの向上方法
インテンシティは天性の才能だけで決まるものではなく、適切なトレーニングによって向上させることができます。例えば、スプリントトレーニングやインターバルトレーニングは、試合中の爆発力と持続力を同時に鍛えるのに効果的です。
また、1対1の対人練習や小規模なゲーム形式の練習では、プレッシャーの中での判断力や身体の強さを実践的に養うことができます。これにより、試合に近い形でインテンシティを体感しながらプレーの質を上げていくことが可能です。
さらに、筋力トレーニングではただ筋肉をつけるのではなく、「サッカーで使える筋肉」を意識することが大事です。たとえば、瞬発力を支えるハムストリングや腸腰筋、ボディバランスに関わる体幹部などが重点的に鍛えられます。
このように、現代のトレーニングは「走れるだけ」ではなく、「賢く、強く、素早く動ける身体」を作ることを目的としており、まさにインテンシティを総合的に高めるための仕組みが整っているのです。
日本代表やJリーグで重視されるインテンシティのデータ
HIRR(High Intensity Running Ratio)とは?
HIRR(High Intensity Running Ratio)とは、「試合中に走った全体の距離のうち、時速20km以上で走った距離の割合」を示す指標です。このデータは、選手がどれだけ激しいプレーをしているか、どれだけインテンシティの高い動きをしているかを数値として測るために使われます。具体的には、守備でのスプリントや攻撃時の裏抜けなど、高速でのアクションがどれだけ含まれているかを示すものです。
例えば、90分間で10km走った選手のうち、2kmが時速20km以上のスプリントだった場合、その選手のHIRRは「20%」ということになります。この数値が高いほど、「ただ走っているだけでなく、全力疾走を多く行っている選手」であることがわかります。
この指標は欧州を中心に導入されてきましたが、日本でも国際基準に倣って近年急速に取り入れられています。インテンシティをデータとして可視化することで、感覚ではなく具体的な数値で選手のパフォーマンスを評価できるようになり、戦術の分析や選手の起用にも影響を与えています。
日本代表が導入している理由
日本代表がHIRRをはじめとするインテンシティ関連のデータを導入したのには、明確な理由があります。それは「世界基準の強度に対応するため」です。日本の選手は技術に優れていると評価されることが多い一方で、体格やフィジカル面で欧米選手に劣ることが課題とされてきました。
そこで、ただ単に走行距離が多いだけでなく、「どれだけ高強度のプレーができているか」に注目するようになりました。HIRRはまさにその可視化手段であり、これにより「走っているだけ」の選手ではなく、「試合に影響を与える走り」ができる選手を評価しやすくなります。
このデータは、試合中のトランジション(攻守の切り替え)やプレスの質を判断する上でも非常に役立ちます。日本代表では試合後のデータ分析の中でHIRRを確認し、次戦への改善点としてフィードバックする流れが確立されつつあります。
Jリーグでのスプリント計測の基準
Jリーグでも近年、スプリントやハイスピード走行の定義を世界基準に合わせる形で見直しが行われました。これにより、時速20km以上の走行をスプリントとしてカウントするようになり、HIRRを含む各種データの取得と公表が進められています。
たとえば、公式サイトでは「スプリント回数」「スプリント距離」「全体の走行距離」などが公開されるようになり、ファンやメディアも選手のパフォーマンスをより具体的に把握できるようになりました。これにより、「この選手はよく走っている」といった主観的な評価から、「この選手はチーム内でもっとも高強度の走りをしている」といった客観的評価ができるようになったのです。
こうした情報は、スカウトや監督にとっても重要な判断材料となっており、選手の起用や育成方針にも影響を与えています。
他国と比較したデータ傾向
日本のHIRRの平均値を他国と比較すると、まだ改善の余地があることが見えてきます。たとえば、プレミアリーグやブンデスリーガなどの欧州リーグでは、スプリントの頻度が非常に高く、HIRRの平均値も日本より高い傾向にあります。これは試合のテンポが速く、選手個々のフィジカル能力が高いためです。
一方、日本の選手は器用で戦術理解度も高いですが、身体能力に頼らずポジショニングや判断で対応するケースが多く、それがスプリント数やHIRRに反映されにくい一面もあります。ただし、近年はJリーグのレベルも向上し、海外でプレーする日本人選手の数も増えており、全体的なインテンシティの底上げが進んでいます。
今後は育成年代からHIRRを意識したトレーニングを取り入れ、グローバルスタンダードに近づけることが求められているのです。
指導現場での活用方法
HIRRなどのデータは、プロだけでなく育成年代の指導現場でも活用されています。特にU-18やユース世代では、「いかに速く、何度もスプリントできるか」を重視したトレーニングが増えています。これは単に走らせるだけでなく、実際の試合を想定したスプリントのタイミングや意味を教えることに重きを置いています。
例えば、ボールを奪ったあとにどのポジションに飛び出すべきか、相手がボールを持った瞬間にどの方向へプレスに行くべきか。こうした「状況判断」と「瞬発力」を組み合わせた練習メニューが広まっており、これがインテンシティの向上につながっています。
また、指導者側もデータを通じて選手の成長を数値化できるようになり、「よく走っていたね」で終わらず、「この区間で何回スプリントできていた」と具体的なフィードバックが可能になっています。これにより、選手自身のモチベーションや改善意識も高まり、全体として質の高い育成が進められているのです。
現代サッカーにおけるインテンシティの本質
フィジカルだけではない総合的な力
インテンシティという言葉から、ついフィジカル的な強さや速さだけを思い浮かべがちですが、実はそれだけではありません。現代サッカーでは、インテンシティとは「プレー全体の質の高さ」と捉えることが増えています。つまり、瞬発力、スタミナ、スピードといった身体能力に加えて、戦術理解、状況判断、メンタルの強さまで含めた“総合的な力”がインテンシティを形作っているのです。
例えば、ボールを持った選手が相手のプレスに対して冷静に判断し、素早くパスを出す。その後すぐにポジションを取り直して次の展開に備える。こうした一連の流れも、十分にインテンシティの高いプレーといえます。ただ走るだけではなく、“プレーの意図”がある動きが評価されるのが、現代サッカーの特徴です。
つまり、「ただ激しく当たる」「走り回る」だけでは、もはや評価されません。むしろ、的確に判断し、必要な場面で高強度のプレーができるかが問われており、それこそが本当の意味での“高インテンシティ”だと言えるのです。
判断スピードとインテンシティの関係
試合の中で重要なのは、素早く正しい判断を下せるかどうかです。この「判断スピード」こそが、インテンシティの質を大きく左右する要素となっています。いくらフィジカル的に優れていても、判断が遅れればチャンスを活かせず、逆にピンチを招くことにもなりかねません。
たとえば、相手がボールを奪いに来た瞬間に、ワンタッチで味方へパスを繋げる。これは、ボールを持つ前に状況を把握し、次のプレーを準備していたからこそ可能になります。こうした「認知→判断→実行」の流れを素早くこなす能力は、まさにインテンシティの高さを象徴しています。
また、守備時の判断も重要です。どのタイミングでプレスに行くか、どこを切って相手の選択肢を減らすか。これらの判断が1秒遅れるだけで、相手にスペースを与えてしまいます。現代サッカーではこうした判断の速さが求められ、それを支えるメンタルの準備や集中力も、インテンシティの一部として捉えられているのです。
インテンシティがもたらす試合の流れ
インテンシティの高いプレーは、チーム全体に大きな影響を与えます。一人の選手が積極的にプレスをかけたり、ボールを奪おうと必死に走る姿は、他の選手にも刺激を与え、「自分もやらなきゃ」という空気を生み出します。こうした連鎖反応が起きることで、チーム全体の守備強度や攻撃への切り替えが速くなり、試合の主導権を握りやすくなるのです。
逆に、インテンシティが低いと相手に自由を与えてしまい、試合のリズムを握られることになります。特に後半の疲れが出る時間帯にインテンシティが落ちると、失点につながるリスクも高まります。
たとえば、リードしているチームが残り10分でさらにプレスを強め、相手の攻撃を封じ込める場面などは、インテンシティが試合の流れを左右する典型的な例です。監督やコーチも選手交代の際には「インテンシティを上げろ」と指示を出すことが多く、それだけチームの勢いに直結する重要な要素なのです。
チーム戦術に与える影響
インテンシティは個人の能力だけでなく、チーム戦術全体に影響を及ぼす要素です。たとえば、攻撃的なチームでは「前線からのハイプレス」を仕掛ける戦術がよく使われますが、これを成立させるには、前線の選手だけでなく中盤やDF陣も連動して素早くポジショニングを変える必要があります。この一体感を生み出すのが、まさに「全員のインテンシティの高さ」です。
また、守備時にゾーンディフェンスを採用しているチームでは、相手のボール回しに対して素早くポジションを修正し、的確にスペースを埋める動きが重要です。これにも集中力と連続的な動きが必要であり、チーム全体で高いインテンシティを維持できていなければ機能しません。
戦術というのは机上の理論だけでは成功しません。ピッチ上で選手たちがどれだけ戦術を実行できるか、それを支える体力・判断力・精神力が揃ってこそ、はじめて機能します。つまり、インテンシティは戦術実現の前提条件とも言えるのです。
若手選手育成への示唆
インテンシティの重要性が広く認識されるようになったことで、育成年代の指導にも大きな変化が見られるようになりました。これまでは技術や戦術理解に重点が置かれることが多かった日本の育成ですが、最近では「強度のあるプレーができる選手を育てる」ことが重要視されつつあります。
たとえば、小学生年代からでも「球際で負けない」「最後まで追いかける」「切り替えを速くする」といったインテンシティに関わる姿勢が教えられるようになってきました。また、ユース年代ではスプリント力やスタミナを意識したトレーニングメニューが導入され、世界の舞台で通用するための基礎作りが進められています。
さらに、育成段階でインテンシティの概念を理解することで、選手自身も「どんなプレーが求められているのか」「自分は試合にどう貢献できるのか」を考えるようになり、より意識の高いプレーヤーへと成長していきます。これこそが、未来の日本代表を支える“インテンシティの土台”と言えるでしょう。
まとめ
「インテンシティ」という言葉は、サッカーにおいて単なるフィジカルの強さだけを示すものではありません。むしろ、それはプレーの強度・判断の速さ・戦術理解・精神力といった、選手やチーム全体の“総合力”を表す重要な概念です。
日本サッカー界でも、ザッケローニ監督やハリルホジッチ監督の登場以降、インテンシティの重要性が注目されるようになり、プロから育成年代に至るまでその概念が浸透してきました。HIRRなどのデータを活用することで、感覚的だった「頑張り」や「激しさ」が数値として見えるようになり、より科学的なアプローチが可能になっています。
今後、日本が世界の強豪と渡り合っていくためには、プレーの質をさらに高め、個々のインテンシティを引き上げていくことが求められます。そのためには、選手自身が常に意識を持ち、トレーニングから高強度のプレーを追求すること。そして指導者が選手のインテンシティを評価し、正しく導くことが重要です。
インテンシティの本質を理解し、ただ激しいだけではない“質の高いプレー”を目指すこと。それが、現代サッカーを生き抜くための鍵となるのです。






